「武雄鍋島家洋学関係資料」が、国の重要文化財に。

文化庁の報道発表 平成26年3月18日
文化審議会答申〔国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定および解除について〕
http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/juyobunka_shitei_140318.pdf
(P5<歴史資料の部>、解説はP27〜28)

武雄鍋島家の洋学関係資料が、国の重要文化財に指定されることに。
この件は、3月19日の新聞各紙に掲載された。

佐賀新聞(佐賀のニュース) 【鍋島家洋学資料国重文に 地元歓喜
蘭学資料としての質と量の豊かさは以前から超一級と高く評価されており、
「国重文にふさわしい保存・展示をしていく必要がある」と表情を引き締めた。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2648830.article.html

佐賀新聞(佐賀のニュース) 【モルチール砲など武雄鍋島家資料 国重文に】
1720〜1860年代の資料で、初の国産モルチール砲、
オランダ産の天球儀や地球儀、洋書類などが含まれている。
江戸時代後期における日本の科学技術の変遷、西洋科学受容の流れを示す貴重な資料として評価された。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2648829.article.html

読売新聞(YOMIURI ONLINE) 【「武雄鍋島家資料」国重文へ】
学芸員は「これまで大事に受け継いでくれた先人に恩返しするためにも、
色々な切り口を見つけ、多くの方に公開していきたい」と話した。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saga/news/20140318-OYT8T01195.htm

朝日新聞朝日新聞DIGITAL) 【佐賀)武雄鍋島家資料、国重文に 江戸期の計2千点】
18日の国の文化審議会で、県内からは、武雄市図書館・歴史資料館所蔵の地球儀や天球儀など
計2224点からなる「武雄鍋島家洋学関係資料」が、一括で国の重要文化財に指定されるよう答申された。
http://digital.asahi.com/articles/ASG3L5GKCG3LTTHB006.html?_requesturl=articles/ASG3L5GKCG3LTTHB006.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASG3L5GKCG3LTTHB006

西日本新聞 【「武雄鍋島家洋学関係資料」国重文答申 2224点 質、量とも群抜く】
日本を近代化に導いた西洋の科学技術導入の歴史をたどる資料として「質、量ともに群を抜く」(市歴史資料館)という。
(Web掲載なし)

当然、樋渡市長のブログでも取り上げられている。

武雄市長物語 【武雄鍋島家洋学関係資料が重要文化財へ】
しっかり保存しながら、許される限り、効果的に展示をする必要があります。
誰も来ない、レプリカだらけで保存のことは何一つ考えていなかった旧蘭学館とは違う、
何らかの展示機能を考える必要があり、それは武雄市図書館とは別にすることも視野に入れ、議論を深めていきます。
http://hiwa1118.exblog.jp/20478492/


しかし、なぜなんだろうな。
なぜ、「誰も来ない、レプリカだらけで保存のことは何一つ考えていなかった旧蘭学館」という言葉を入れずにいられなかったんだろう。

めでたいことだろ?
地元の宝が、国の宝になる。
喜ばしいことじゃないか。

これまで蘭学館に関わった人たちが一様に「保存のことは何一つ考えていなかった」というのが事実なら、
2,200点を超える洋学関係資料は現在まで残ることなく、重文の指定を受けることもなかったはずだ。
佐賀新聞の記事には、以下の市長コメントも紹介されている。

 「これだけの評価をいただいたので、国重文にふさわしい保存と展示をし、
  きちんと受け継いでいくという大きな役割を担った」

文化財でも美術工芸品でも、それが後世に残る背景には、多くの守り手の存在がある。
無名の守り手たちに大切にされ、調査研究が重ねられ、保存管理に力を尽くされ、今に残る。
それが「今、ここに在る」のは、今、ここにいる人間だけの力によるものじゃない。

過去には、「五流、いや十流です(笑)。蘭学館、あのまま残しておくことが歴史に対する冒涜だと思った。」
というツイート(https://twitter.com/hiwa1118/status/303138245192056835)もあった。
(※3月20日、下部に追記)
先人の尽力や願いに敬意を払い、思いを馳せることもできないばかりか、
貶めて見せなければ気が済まないかのような首長の言葉が、心底残念でならない。


蘭学館関連のまとめ

「武雄鍋島家の洋学関係資料が国重要文化財に指定へ」への反応
@fmht7さんより
http://togetter.com/li/644343

佐藤賢一先生の蘭学館に関する議論に樋渡啓祐武雄市長が反論
@Cristoforouさんより
http://togetter.com/li/521484

武雄市歴史資料館・蘭学館を惜しむ声
@fmht7さんより
http://togetter.com/li/421957



※ 追記 2014年3月20日 20:51

市長の「五流、いや十流です(笑)。」発言について、@fmht7さんより。
https://twitter.com/fmht7/status/446326440397533185

あらためて流れを追ってみると、確かにそう読めました。
あとに続く「歴史に対する冒涜」はさておき、
「五流、十流」については、蘭学館に対する言葉ではなかったと思われます。

「歴史に対する冒涜」、「保存のことは何一つ考えていなかった」、
「有象無象」などの発言を肯定する気はまったくありませんが、
市長が蘭学館を五流、十流とみなしていると誤読したうえでツイートを重ね、
拡散したことについては、私に非があります。