今、「蘭学館」はどこにある?
蘭学資料の常設展示室「蘭学館」がCD・DVDレンタルコーナーになった経緯を、ざっくりと、新聞記事を中心に。
漏れもありそうなんで、気がついたらぼちぼち追加予定。
● 2012年5月4日
佐賀新聞(佐賀のニュース) 【武雄市立図書館、ツタヤに運営委託計画 21時まで開館】
図書館に併設している蘭学館と企画展示室の運営は委託しない。4日に東京と佐賀市で会見した樋渡啓祐市長は「展示室などは新設や市庁舎への移転なども考える」とした。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2199763.article.html
● 6月12日
佐賀新聞 【歴史資料館に田代酒造跡も検討 武雄図書館委託計画で】
武雄市図書館の運営委託計画に絡んで併設の歴史資料館の移転問題が浮上していることについて、樋渡啓祐市長は12日、移転先の一つに武雄町武雄(新町)の田代酒造跡を検討していることを明らかにした。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2223260.article.html
● 7月2日
武雄市を視察した某町長さんが、Facebookに蘭学館の写真を掲載。
「写真の(蘭学館」は取り壊し、CDなどの視聴覚室にするという。また、このスペースの隣には、新たに「コミュニティFM」を開設するという。その手筈も既に済んでいる。」と書く。
● 7月12日
年換算の委託料は1億1千万円。現行の年間運営費は1億4500万円だが、これには業務委託から除いた蘭学館など歴史資料館の運営費も含まれているため単純比較できない。市教委は「委託業務部分だけの比較で1割程度の削減はできる」とみている。
改修は図書館部分の整備に加え、本の販売や飲食コーナー設置などが行われる見通し。改修費用は、図書館本体は市、販売などの部分はCCCが負担する。図書館内にある企画展示室は残すが、蘭学館はこれから検討する。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2245338.article.html
● 7月18日
武雄市議会7月臨時議会
某町長さんのFacebook記事(蘭学館を壊す・FM局)について質問する谷口議員に対し、議長が、「いやいや、まだまだそこまでは全然話進んでないでしょ。話進んでませんよ。なんかちょっとそんな話を聞いたくらいでぽんぽんぽん出して」。p52〜53
http://www.city.takeo.lg.jp/shisei/shigikai/201207/20120718.pdf
● 9月8日
毎日新聞 【<公立図書館>CCCと提携 貸し出し履歴の2次利用巡り議論】
市立図書館の正式名称は「武雄市図書館・歴史資料館」。図書館のほか、地域に伝わる幕末の文化財を展示する蘭学館などからなる。
蘭学館は展示をやめ、商用スペースとしてレンタル用のDVDを並べることを検討する。開館準備のため、図書館は11月1日から休館する。
● 9月12日
武雄市議会6月定例会・谷口議員の一般質問
教育部長が「蘭学館の取り扱いにつきましては、まだ最終的な結論に至っておりません」と答弁。p222
9月8日付毎日新聞の記事内容(蘭学館の商用スペース化)について、教育部長が「新聞の発表でしょうか、それは。新聞記事でしょうか。私、承知をいたしておりません」と答弁。p228
http://www.city.takeo.lg.jp/shisei/shigikai/201209/20120912_1.pdf
● 9月14日
江戸後期の蘭学史料を展示した「蘭学館」に「よく行く」としたのは6.4%、「たまに行く」が26.7%だった。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2284425.article.html
佐賀新聞(佐賀のニュース) 【武雄市図書館 改修総投資額は7億5000万円】
2階も一部を開架スペースに使い、開架図書は9万冊から20万冊に増える。1階のキッズスペースは広くなり、蘭学館と企画展示室は残す。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2284740.article.html
●10月7日
西日本新聞 【武雄市の「TSUTAYA」新図書館 開架スペース大幅拡大】
館内にある蘭学館と歴史資料館は、市教育委員会が引き続き運営する。
● 11月11日
武雄市教委は15日午後7時から、市文化会館で新図書館構想についての報告会を開く。(略)
報告会では構想の内容を説明し、市民からの質問に答える。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2326040.article.html
● 11月15日
武雄市教育委員会主催で、新図書館構想についての市民向け報告会が実施される。
「物販・カフェで図書館部分が狭くなるのではという質問があるが、開架スペースを広げたうえで、余裕のあるスペースをCCCが使用」と説明を受ける。
「蘭学館は現行のまま? 残るんですね? 本当に大丈夫なんですね?」という市民からの質問への武雄市教育委員会の回答は、「今回の改修予算には入っていない」。
http://togetter.com/li/408233
● 11月17日
佐賀新聞 【武雄市教委 新図書館構想で報告会 市民23人参加、質問相次ぐ】
参加した市民は「(江戸期の蘭学資料を展示した)蘭学館がなくなるとのうわさを聞いている。蘭学資料は日本の宝。つぶすようなことがあってはならない」と質問。市教委は「蘭学館は改修工事の対象外。資料は武雄の素晴らしい財産なので守っていく」と答えた。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2328617.article.html
● 11月20日
西日本新聞 【市教委報告会 武雄市新図書館構想「蘭学館存続を」市民から質問相次ぐ】
蘭学館については「なくなるというわさがある。武雄の蘭学資料は日本の宝であり、つぶしてはいけない」との意見に対し、市教委は「蘭学館は市の改修工事予算に含まれていない。資料は武雄の素晴らしい財産なので守っていく」と答えた。
● 12月10日
武雄市議会12月定例会・谷口議員の一般質問。
蘭学館について、教育部長が「総合的に検討段階で現時点でお答えする環境にない」と答弁。
● 12月11日
武雄市議会12月定例会・吉川議員の一般質問への市長答弁抜粋(Ustreamより文字起こし)
まずですね、僕が最初に入ったとき愕然としたのは、蘭学館入ったときに、もう真っ黒な壁があるじゃないですか。
あんなとこ入ろうと思わない、思わないでしょ、そもそも論。
そもそも、あの蘭学館は、設計のミスです。失敗です。うん。
だからなんであんなの予算つけたのかなていうふうにやっぱ思うんですよ。
あの、じゃあ今の蘭学館をどういう風に使うかっていうと、我々はここをこういうふうに使いたい。
CD、DVDを、これもう、図書館の延長としてこれ歴史的財産でありますので、これを使って、ここにいろんな人たちを呼び込む。
で、こういうCDとかDVDを置く分には、あの蘭学館っていうのは非常に適してんですね。防音効果もある。
もう図書館もう本だけじゃありません。
やっぱり、我々とすれば、優れた映像であるとか、優れた音楽も一緒に出して行く。これも文化であります。
これを、CCCのお力を借りて、CCCの予算で、ここを改修して、ここにもお越しいただくということで、結果的に図書館の魅力が総合図書館としての魅力が私は増す増すというふうに理解をしております。
じゃあ今の、蘭学館に置く、置いてるものをどうするかということについては、横の企画展示室をここを常設展にします。常設の置き場。
p122〜123
http://www.city.takeo.lg.jp/shisei/shigikai/201212/20121211_1.pdf
※ 前日までは主管の教育委員会が「総合的に検討段階で現時点でお答えする環境にない」はずだった蘭学館。そこに、CD・DVDがぎっしり並ぶイメージ図まで既に出来上がっているという不思議をUstreamで目の当たりにした。
市長のツイートhttps://twitter.com/hiwa1118/status/278496335743815681
● 12月12日
佐賀新聞 【武雄市新図書館 蘭学館“閉鎖”へ 映画・レンタル店に】
佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長は11日、来春からの市図書館民間委託に伴い、図書館にある歴史資料館内の「蘭学館」をCDやDVDの有料レンタルショップのスペースに提供する考えを明らかにした。これまで蘭学館は残す方向だったが、市民の声などを理由に方針を変えた。蘭学館の史料は隣接する企画展示室とメディアホールで展示し、再整備も検討するとしている。
市議会一般質問で明らかにした。樋渡市長は議会後、「市民アンケートで映画・音楽のレンタルに期待する声が挙がっていたことなどで、10日ほど前に最終判断した」と説明。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2346345.article.html
西日本新聞 【武雄市 市図書館・歴史資料館「蘭学館」 有料レンタルコーナーに アンケ結果受け方針転換】
当初は蘭学館を残す方針だったが、来場者が少ないことや、市民アンケートで図書館の映画・音楽のレンタルサービスに期待する声が多かったことを受けて、方針転換した。
市によると、蘭学館の改修費はCCCが負担し、賃貸料も支払う。展示資料は隣接する企画展示室やメディアホールに移す計画。
武雄市長物語 【佐賀新聞の記事はおかしい】
http://hiwa1118.exblog.jp/17413343/
● 12月13日
市教委は当初、CD・DVDコーナーを図書館の中に設ける考えだったが、CCC側から図書コーナーと分けて置きたいと提案があり再検討していたという。
樋渡市長は「音楽、映像関係も充実させてほしいという市民アンケートの結果を踏まえ意見を反映させた。蘭学館の資料は過渡的に企画展示室に展示するが、新たな蘭学館について市庁舎建設と併せて考えていきたい」と話した。
佐賀新聞 【佐賀新聞報道を武雄市長が批判 市議会一般質問で】
市長は議会後「史料は新図書館オープンとともに館内の別の場所で展示するので閉鎖ではない」とし、「記事に問題はないが、見出しは記事内容と落差がありすぎる。非を認めない限り、納得できない」と話した。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2347701.article.html
武雄市長物語 【佐賀新聞の言い分】
http://hiwa1118.exblog.jp/17421651/
※ ちなみに、武雄市図書館のホームページには、「※平成24年10月31日の蘭学館閉鎖に伴い、展示中止」という記載があったりするんだな。
http://www.city.takeo.lg.jp/rekisi/kikaku/kako.html
● 12月15日
武雄市は14日、開会中の定例議会に市図書館・歴史資料館設置条例改正案を追加提案した。来春からの市図書館の民間委託に伴い、歴史資料館内の「蘭学館」をCD・DVDの有料レンタルスペースとして提供することに伴う措置。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2349437.article.html
毎日新聞 【武雄市:「蘭学館」改装へ議会に追加提案−図書館・歴史資料館】
武雄市図書館・歴史資料館内で江戸後期の蘭学史料を展示していた「蘭学館」をツタヤのレンタル店に改装するため、同市は14日、設置条例の改正案を開会中の12月市議会に追加提案した。図書館と歴史資料館の両機能を高めるためという。
図書館部分にはCDやDVDを有料でレンタルするコーナーも設ける予定だった。しかし、コーヒーチェーン「スターバックス」の出店や全蔵書を開架する方針などのためスペースがなくなり、蘭学館の移転を決めた。
● 12月17日
読売新聞 【歴史資料展示「蘭学館」、有料レンタルコーナーに改修】
市は当初、図書館のみを改修し、歴史資料館はそのまま残す方針だった。しかし、市民アンケートで「行ったことがない」「あまり行かない」が66%に達したことなどを踏まえ、方針を転換した。
● 12月20日
武雄市長物語 【理由なき反対は論外】
http://hiwa1118.exblog.jp/17472541/
● 12月21日
佐賀県の武雄市議会は20日、民間委託される市図書館・歴史資料館の常設展示室「蘭学館」を有料レンタルCD・DVDコーナーとして利用するために提案された市図書館・歴史資料館設置条例の改正案を賛成多数で可決した。
改正で歴史資料館部分の蘭学館は、図書館の一部になる。隣接する企画展示室とメディアホールの名称は「蘭学・企画展示室」と改め、蘭学館の史料は新たな展示室に展示される。http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2357639.article.html
西日本新聞 【蘭学館 レンタルコーナーに 条例改正案を可決 武雄市議会】
採決の前に意見を述べる答弁では、6人の議員(賛成3人、反対3人)が登壇。「蘭学館の民間貸し出しは寝耳に水。市民の理解を得るために時間を十分に取って決断すべきだ」という反対意見に対し、賛成議員は「蘭学館の展示のあり方を改善し、これまで以上に蘭学資料をはじめとする武雄の貴重な資料の保管、研究、展示を強化するための改正だ」などと反論した。採決の結果は賛成19人、反対5人だった
条例改正を受け、蘭学館のスペースは図書館の指定管理者カルチュア・コンビニス・クラブがCD・DVDの有料レンタルコーナーに改装する予定。展示資料は隣接する企画展示室などに移す。
● 2013年2月17日
蘭学館について、「五流、いや十流です(笑)。蘭学館、あのまま残しておくことが歴史に対する冒涜だと思った。」と市長がツイート。
https://twitter.com/hiwa1118/status/303138245192056835
● 4月25日
Cable One News 【リニューアルオープンからまもなく1ヶ月 武雄市図書館・歴史資料館 現状報告会見】
「市民のみなさんもリピーターのみなさんが多いんで、やっぱこう絶えずこう変わっていくっていうような印象と、やっぱりあの企画・蘭学展示室をもっと充実させようってやっぱ思いますよね。秋には棟方志功展もやりますしね、だからその図書館だけじゃなくて、ぼくら企画・蘭学展示室もあの一所懸命やっていきたいなあと思いますね。」と市長がコメント。
http://www.cableone.ne.jp/2ch/wvx/hokok.wvx
『図書館が街を創る−「武雄市図書館」という挑戦』(ネコパブリッシング)より p15
樋渡「市民の20%しか利用していない図書館というのも、そのままではやはり負債ですよ。それをきちんと資産にできる道を指し示す。それも行政の使命だと思うんです。武雄市図書館にも「蘭学館」というスペースがあって、そこには江戸時代の蘭学資料が収蔵されているのですが。正直あまり使われてはいなかった。そこを今度は映像と音楽のスペースにして、夜はずっと映画を流しておこうかと考えています。いまあるもので何でもできるんですよ。何でもできる。負債じゃない。みな資産にできるんです。」
● 蘭学館関連のまとめ(編集中)
佐藤賢一先生の蘭学館に関する議論に樋渡啓祐武雄市長が反論
http://togetter.com/li/521484
武雄市歴史資料館・蘭学館を惜しむ声
http://togetter.com/li/421957
※ 追記 2014年3月20日 20:51
市長の「五流、いや十流です(笑)。」発言について、@fmht7さんより。
https://twitter.com/fmht7/status/446326440397533185
あらためて流れを追ってみると、確かにそう読めました。
あとに続く「歴史に対する冒涜」はさておき、
「五流、十流」については、蘭学館に対する言葉ではなかったと思われます。
「歴史に対する冒涜」、「保存のことは何一つ考えていなかった」、
「有象無象」などの発言を肯定する気はまったくありませんが、
市長が蘭学館を五流、十流とみなしていると誤読したうえでツイートを重ね
拡散したことについては、私に非があります。